PRP療法

Platelet-Rich Plasma (PRP) Injection

PRP療法(自己多血小板血漿注入療法)

PRP療法(自己多血小板血漿注入療法)は、海外では10年以上の実績があり、ヤンキースの田中将大選手や、エンゼルスの大谷翔平選手が、右肘の靱帯損傷でPRP療法を行なったことでも知られています。

※当院は、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」において求められる「再生医療等提供計画」に関する届出を関東信越厚生局に提出・受理されております(第3種 計画番号:PC3150497)。 これにより、細胞培養加工物(PRP)の筋肉・腱・靭帯・皮膚への投与が可能になっております。

  • 自己多血小板血漿(PRP)注入療法とは?

    PRP療法(自己多血小板血漿注入療法)は、患者様ご自身の血液中に含まれる血小板を利用した再生医療であり、血小板の成分だけを高い濃度で抽出し、注射する治療法です。

    スポーツ医学では肘や膝、靭帯損傷・骨折などの治癒を高める目的で行われている治療法です。従来、テニス肘、ゴルフ肘、ジャンパー膝などの膝の膝蓋腱炎、アキレス腱炎には、ステロイド剤を注射していました。靭帯損傷や骨折では、固定して時間を待つしかありませんでした。しかし、近年の医学研究の発達に伴い、ステロイド剤を全く使用しない、新しい安全な治療法が開発されました。それが、自己多血小板血漿(PRP)注入療法です。

    自己多血小板血漿注入療法のイラスト
  • PRP療法が「早期治癒」や「痛みを軽減」させる理由

    傷やケガが治るときに、どうして治るか考えた事がありますでしょうか?
    実は、血液中の血小板には組織修復(自然治癒力)を促進する様々な成長因子、サイトカインなどの分子が多く含まれており、これらの分子が周囲の細胞に働きかけ、損傷した組織の修復(自然治癒力)が促進され、「早期治癒」や「痛みを軽減」させる効果が期待できると言われています。

  • PRP療法が効果的な患者様(※一例)

    • スポーツ外傷・障害

      自己PRP注入療法により、テニス肘、またはゴルフ肘と呼ばれる肘内側・外側上顆炎、ジャンパー膝と呼ばれる膝蓋腱炎、アキレス腱炎足底腱膜炎などの腱付着部症や、肉離れ(筋不全断裂)、筋・腱断裂、靱帯損傷などのケガをより早期に治癒させる確率を高め、慢性化した腱や靱帯由来の痛みを軽減する効果が見込まれます。 そのため、一日でも早い復帰が必要なプロアスリートや、重要な試合まで時間との戦いのトップアスリート、テニスやゴルフの愛好家の方などの外傷・障害の治療として効果的な治療法です。

    • ひざの変形・痛み

      ひざの変形・痛みは、PRP療法との相性が良いと言われています。変形性関節症※では、変形の進行に伴い、軟骨がすり減ったり、半月板が傷んだり、炎症が起きてひざに水がたまったりします。PRP療法は、こうした組織の修復を促したり、関節の炎症を抑制したりする効果が期待できます。これまでは、変形性関節症の方に対する薬物療法としては、痛み止めの内服やヒアルロン酸の注射などを行ってきましたが、こうした既存の治療が無効であった方でも、PRPを関節に注射することにより痛みの取れた方が多くいらっしゃいます。
      変形性膝関節症に対するPRPの量は、国内外の文献で2cc以上10cc以下の範囲で行われており、dose dependent(量が増えると効果が高まる)ことが報告されています。そのため、当院では、最低量が2ccで最大10ccまで症状に応じて増やすようにしています。注射の量に関しては、初回診察時にドクターとご相談下さい。

  • PRP治療の大枠の流れ

    • 1.診察

      まず、診察・検査結果でPRP注射可能・適応ありと医師が判断した上で治療が可能となります。 診察時に医師と適切な量や時期を相談し、PRP治療の計画を立てます。その計画を元に、次回以降のご予約をお取りいただく流れとなります。

      各種画像検索(レントゲン撮影、エコー検査、MRI検査など)
      血液検査(感染症の有無、血小板数など)
    • 2.PRP療法

      患者様から、通常の採血検査で採血する量とほぼ同量の約10mlの血液を採血させて頂きます。特殊な精製キットを使用して、血液中にある血小板のみを精製し、血小板濃度を通常の血液の約3~7倍に高く濃縮した、自己多血小板血漿 (PRP) を作製し、これを患部に注射します。

    PRP治療の様子
  • PRP療法の安全性・注意点

    • <安全性>

      すでにご説明した通り、採血前まで患者様の体に流れていた、本来は傷を治す働きのある血小板を精製して少量注入するだけですので、肝炎などのウイルス感染の危険性やアレルギー反応を起こす心配もなく安全と言えます。さらに、PRP療法は、再生医療法が適用されますので、安全性は担保されていると言えます。

    • <注意点>

      (1)注射当日
      1時間程度の患部を安静にしていただきます。また帰宅後は激しいトレーニングやマッサージ、禁酒禁煙をお願いしております。

      (2)翌日〜1週間
      注射後3~4日は細胞の活発な代謝が行われますので腫れやかゆみ、赤みや軽い痛みなどがありますが、その後自然に消失して行きます。

      (3)3週間~4週間後
      一度診察を行い、経過をチェックします。腱炎や腱付着部炎等の場合、一度で治る方もいますが、痛みが軽くはなったがまだ残っている、と言う場合にはご希望に応じて同様な処置を2~3回程度繰り返すのが一般的です。

  • PRP療法をご希望の方へ

    リハビリ等で通院中の方は、理学療法士又は医師にご相談下さい。
    診察で当院へいらっしゃる方は、医師の診察を受けて頂き、治療が適応になるか判断させていただきます。

その他の治療との比較

    • 「PRP療法」と「体外衝撃波治療法」の違いは?

      近年、テニス肘、ゴルフ肘、ジャンパー膝などの治療として、「PRP療法」と共に「体外衝撃波治療法」も効果的な治療法として知られています。
      ある研究発表では、ジャンパー膝の12ヶ月のフォローアップの成績だとPRP療法(多血小板血漿注入療法)の方が治療成績が良く、より組織再生が働いているとの研究発表があります。一方で、早期疼痛軽減、競技復帰にはESWT(体外衝撃波疼痛治療)がより効果的とされています。
      治療方針として多いのが、シーズン中はESWT(体外衝撃波疼痛治療)、シーズンオフにPRP(多血小板血漿注入療法)か手術を選択するという方針です。成績に差はありますが、双方の利点は同じと考えていいでしょう。

      <PRP(多血小板血漿注入療法) - ESWT(体外衝撃波疼痛治療)比較表>

      PRP ESWT
      組織再生
      早期疼痛軽減
      ダウンタイム 3〜4日 なし
      消炎作用
      早期競技復帰 1週間後より可能 当日より可能
      向いているタイプ ・炎症が強い
      ・画像上損傷部位が広い
      ・鎖骨・肋骨付近のケガ(肺には衝撃波を照射できないため)
      ・神経に隣接したケガ(内側上顆炎など)
      ・休養期間が十分に設けられる
      ・痛みをすぐに取りたい
      ・試合までに休みを取れる時間がない
      ・鈍痛が一年以上続いている
      ・注射を試みたが、満足する効果が得られていない
      ・注射以外の方法で治療したい

      ※:PFC-FDは1回の採血で6cc(2回分)作製するため、お支払金額は¥200,000(税抜)となります。

      当クリニックでは、「PRP療法」と「体外衝撃波治療法」との併用も可能です。併用することにより、より治療効果を高められるケースが多くあります。詳細な治療プランは、医師と相談の上、決めていただければと思います。

    • 「PRP療法」と「PFC-FD療法」の違いは?

      • PFC-FD療法とは?

        PFC-FD療法とは、PRP療法同様、患者数ご自身の血液からPFC-FDを作製、患部に注射する治療法です。注射後、損傷した組織の修復(自然治癒力)が促進され、「早期治癒」や「痛みを軽減」させる効果が期待できます。

      • PRP療法とPFC-FD療法の違いは?

        PRP療法とPFC-FD療法の違いは、PFC-FD療法は作製したPRPをさらに活性化させ、血小板に含まれる成長因子だけを抽出、無細胞化した上で濃縮している(成長因子の総量がPRP療法の約2倍(※TGF-β))点で、これをフリーズドライ加工することにより、長期保存も可能なPFC-FD(血小板由来因子濃縮物-フリーズドライ化)が作製されます。
        また、PFC-FD療法は、体外で成長因子を抽出、無細胞化するため、PRP療法より痛みが少ない治療法でもあります。

      <PRP(多血小板血漿注入療法) - PFC-FD基本情報(血小板由来因子濃縮物) 比較表>

      基本情報 PRP ESWT
      成長因子の総量 ◎(PRPの約2倍※)
      注射後の痛み あり 少ない
      投与日 採血当日 採血から約3週間後
      保存期間 当日のみ 約半年間

      ※:Araki et al. Tissue Engineering: Part C, 18:3,176-185, 2012